ラズベリーパイで低温調理器を作る!(プロローグ)
■美味い肉が食べたい!
ここ数年、肉ブームが続いていますね。
ステーキ、牛かつ、ローストビーフ、熟成肉と当分ブームは続きそうてす。
しかし、分厚いステーキを自分で焼いても、なかなか納得のいく焼き加減にならない。
外側は焼けているようでも、肉の中心への火の入りが甘かったりなかなか難しい。
理想は、外は香ばしく中も火は通っていてしっとりとしたミディアムレア。
そんな風に、上手く分厚い肉に火を通す何か良い方法は無いかといろいろと調べていると
「低温調理」という料理法がありました。
そこで、最近気になっていた低温調理器の開発に挑戦します。
■ ところで、低温調理って何?
フライパン調理だと硬くなりがちな食材も、プロ並みに食材の旨味を引き出し料理できると噂の低温調理。
海外を中心に、今後日本でも流行りつつある調理法です。
「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第四の調理法「低温調理」!!
別名「真空調理法」とは?
肉のタンパク質の2大要素、「ミオシン」と「アクチン」それぞれ熱変性します、
ミオシンは50℃、アクチンは65.5℃。
50℃以下では肉に火は入らないので、アクチンが変質してしまう寸前の60℃近辺の
温度を維持し調理できると、肉が「おいしい」状態となり、肉本来の旨味を引き出せる、
それが低温調理法なのです。
輸入品の低温調理器を買えばいいことかもしれませんが、それでは面白く無い。
というか、自分で作るのが楽しい!
ということで、ラスベリーパイを使い市販の低温調理器に迫ってみます。
■「ツインバード スロークッカー」を使ってみる
今回はヒーター兼調理容器として使え都合がいい、ツインバード工業の「スロークッカー」を使用します。
この調理器はゆっくりとした加熱調理を行い、シンプルにコトコトと食材を加熱し煮る調理器具。
アマゾンで3000円程度で入手できます。
この調理器具は温度制御機能が無いため、成り行き温度で調理する調理器具です。
これを使い低温調理を行うので、ラズベリーパイの出番となります。
温度センサーとGPIOでSSR(ソリッドステート・リレー)をコントロールし、温度制御します。
■「ツインバード スロークッカー」の実力チェック
では、最初に「ツインバード スロークッカー」の実力を見てみましょう。
下のグラフはスロークッカーに水を張り蓋をして、ラズベリーパイに接続した温度センサー(熱電対)で水温を計測したものです。
青いグラフが水温、赤いグラフは室温です、測定間隔は10秒。
グラフから、放っておくとほぼ100℃近辺まで上昇してしまうのがわかります。
20℃の水が沸騰して100℃(実際には98.5℃でした)になるまで約2.5時間掛かっています。
98℃でサチュレーション(飽和)したのを確認しヒーターをOFFにしました。
その後、温度はゆっくりと下降してゆきます。
(測定した自宅の標高が500メートル程度なので98.5℃で沸騰し、温度がサチュレーションしたものと思います)
ヒーターの性能としては、10℃上げるのに約18分かかり、下降時間はー10℃で約40分というところで、まさに「スロークッカー」でした。
200Wのヒーターなのでこんなものでしょう、昇温速度は遅いのですが、最初に目標温度に近い湯を入れるなどすれば問題無いでしょう。
■オーバーシュートを調べる
次に、ヒーターを目標温度で止め、そこから何度上昇してしまうかオーバーシュートを見てみます。
下のグラフは42℃から「スロークッカー」を温め、目標にした50℃になったところでヒーターをOFFにしたものです。
目標の50℃でスイッチをOFFにしたあとも、惰性で56.5℃まで上昇し大きくオーバーシュートしてしまったのがわかります。
これでは60℃を目標温度に設定しても、牛肉のアクチンが変性してしまいますね。
目標温度以上になったらヒーターをOFF、目標温度以下になったらONにするような単純な温度制御ではダメなようです。
制御プログラムの作成は簡単には行かないかもしれません。
■調理中の撹拌について
調理中水温を目標温度に保っても、対流だけでは食材の内部まで熱が上手く伝わりません。
また、温度センサーがヒーター側に近かったり食材に近かったりすれば、正確な温度制御はできません。
そこで、調理容器内を撹拌する必要があると考え、水中ポンプを使うことにしました。
アマゾンで良さそうなものを見つけました。
中国からの発送の様で少し心配しましたが、2週間近く掛かり無事到着。
この水中ポンプは小型でDC5Vで動作します、最高100℃まで使用でき、USB端子から電源供給できるのでラズベリーパイと電源を共有でき大変便利です。
実際にスロークッカーに入れて動作を見たところ、適度な流量があり内部を上手く撹拌でき、この水中ポンプの選択は正解でした。
これで器具の購入は完了です。
続いて次回はハードウェアの製作に移ります。
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